第57回 歯磨剤(歯磨き粉)のヒミツ

 新型コロナウィルス感染拡大で、約1年間も断続的に続いていた緊急事態宣言が先日解除になりました。春の陽気で気温も暖かい日が続いているので、外に出て羽を伸ばしたい気分ですが、まだ新型コロナウィルスの脅威が無くなったわけではありませんので、ここでより一層気を引き締めて感染予防に努めていきましょう。
 さて、毎日の徹底した口腔ケアが新型コロナウィルスの感染予防に有効であることは、このコラムで何度もお話してきましたが、ご自宅での歯みがきに多くの方が使用している歯磨剤(歯磨き粉)そのものにも感染予防に有効な可能性があることがわかってきました。

歯磨剤に使用されている成分のチカラ

  毎日の歯みがきの際、歯磨剤を使用している方が多くいらっしゃると思います。この歯磨剤や洗口剤に広く使われている複数の成分(ラウリル硫酸ナトリウム、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、ラウロイルメチルタウリン酸ナトリウム等)が、新型コロナウィルスの身体への侵入や結合をブロックする可能性が明らかになりました。
 さらに、お口の中を常に潤している唾液には、IgA抗体という成分があり、インフルエンザや新型コロナウィルスをブロックし感染を予防してくれています。多くの歯磨剤に含まれているこれらの成分は、IgA抗体の活性には影響を与えず、身体の免疫機能を阻害せずに、ウィルスの侵入を防ぐことがわかりました。
 このように口腔内に侵入したウィルスは、歯磨剤を用いた歯みがきで感染を予防できる可能性があります。また既に口腔に感染している新型コロナウィルスは、歯磨剤を用いた歯みがきでウィルス量を減少させることも期待されています。
 歯みがきの際に歯磨剤を使うことで、スッキリした爽快感とともに、口臭予防、虫歯予防、歯周病予防、歯肉のマッサージ、そしてウィルスの感染予防にも一役買っているのです。

 これからも続くwithコロナの時代に、歯磨剤を用いた歯みがきは、虫歯や歯周病の予防と同時に、化学の力によりウィルス感染対策という新しい役割が見いだせたのではないでしょうか。
 マスクとともに歯みがきは誰でも気軽にできる感染予防の第一歩です。ぜひ日々の歯みがきを積極的に行い、感染対策していきましょう。