第72回 前歯と奥歯 場所と形と役割の違い

 日々様々な患者さまのお口の中を診ていく中で、以前のような奥歯の虫歯の本数が減ってきていることに、私たちはとても嬉しく感じている一方、先月のコラムでもお伝えしたように、スポーツドリンクやジュース、食生活の変化などによる、今まででは少なかった前歯の虫歯や酸蝕症が増えてもきています。
 では虫歯の出来てしまいやすい部位、出来づらい部位はあるのでしょうか。
この事を理解しながら日々の口腔ケアを行うと、より虫歯になりにくいお口つくりが出来るでしょう。

前歯と奥歯の役目

 皆さんもご自身のお口を鏡で見てみると、前歯と奥歯で形が違うことは良くわかるかと思います。
前歯は平らで薄く、奥歯は太く短く、噛みあわせる咬合面には細かい溝が見えますね。これは歯の生えている場所によって役割が違うことを示しています。
前歯は上下に6本ずつ計12本、中心から奥歯に向かって1番2番3番と左右に数えていきます。
食事の時、前歯は食べ物を噛みきりやすくするため、上下ともに平らでハサミのように噛みきります。いわゆる八重歯と呼ばれている3番前歯は糸切り歯とも言われるように、食べ物を咀嚼(そしゃく)しやすくするため、細かく刻むことが前歯の役目です。
 咀嚼しやすい大きさになった食べ物は、お口の中で奥歯に送られて、そこで胃で消化しやすくなるようさらに細かくすり潰され唾液と混ざり咀嚼されて胃に送られます。まるで臼(うす)で物がすり潰されることや歯の形から奥歯は臼歯と言われています。奥歯の表面に細かい溝があるのも食べ物をすり潰しやすくするためです。

歯の形と役割を理解して口腔ケア

 このように前歯と奥歯では形や役割が違うので、歯みがきの仕方も変わってきます。
前歯は食べ物を噛み切ることが役目なので、歯の表面や裏側、また歯と歯の間にも食べかすが残りやすくなります。
特に前歯はお口の外からも良く見える部分なので、人とのコミュニケーションにも重要な歯です。歯の生え際なども注意して歯みがきをすることが重要です。デンタルフロスや歯間ブラシの併用もおすすめします。
奥歯の役目は食べ物をすり潰すことなので、噛みあう面(咬合面)その表面の細かい溝に食べかすが残りやすく、これが虫歯の主な原因でした。
このような事に注意しながら日々の口腔ケアを続けていけば、より虫歯になりにくいお口をつくりましょう。