第63回 骨粗しょう症のお薬と歯科治療

 アクロネル、リカルボン、フォサマック、ベネット、聞き覚えがありますか?
これらは骨粗しょう症の患者さまに処方されるお薬の商品名の一部です。
聞き覚えのある方の多くは飲んだことがあるからかもしれません。
これらはビスフォスフォネート製剤(BP製剤)と呼ばれて、骨の代謝を抑えることで骨を強くするお薬で、一般的に骨粗しょう症や高カルシウム血症の患者さまに処方されています。
 このBP製剤を飲んでいる方は歯科治療の際には注意が必要です。

骨代謝を抑えるお薬(BP製剤)

 私たちの体内では常に様々な組織の新陳代謝が行われています。骨もそのひとつです。
骨は一度形成されるとずっと変わらないというイメージだと思いますが、実は常に新しい組織へと置換されています。これを骨代謝といいます。骨代謝は「破骨細胞による骨の吸収→骨芽細胞による骨の再形成」の繰り返しで、若い方で3~4年、高齢の方でも5~10年程度の周期で行われています。
 BP製剤はこの破骨細胞の働きを抑えることによって骨の吸収を防ぎ、骨代謝を抑えることができますが、副作用も多く、特に歯科治療の際には注意が必要です。
 骨代謝と同じように歯肉を作る作用も抑えてしまうので、歯周病や合わない入れ歯などで傷ついた歯肉も治りづらくなってしまいます。また抜歯や外科的な治療の際、骨代謝が抑制されていることで歯を抜いた後、骨も歯肉も治ることなく細菌に感染してしまい骨壊死してしまうケースもあります。
 そのような事にならないために、当院では事前に持病や飲んでいるお薬などを詳しく確認してより安全に治療できるよう心掛けています。

飲んでいるお薬を理解しましょう

 治療の際には持病や今飲んでいるお薬を確認し、場合によっては一時的に服用を止めていただく場合もあります。
 骨粗しょう症のお薬でも問題なく歯科治療できるものもあります。骨粗しょう症の治療に限らず、今飲んでいるお薬の名前、用法や効果、副作用など処方された医師に聞いておくと良いでしょう。
おくすり手帳などお持ちいただくのも結構です。
 歯科医師、医師、そして患者様ご自身のトライアングルで治療に臨むのが大切です。
 治療に際し、不安なことや分らないことがございましたら、お気軽にお声がけください。