第58回 噛む力(咬合力)の大切さ

 私たちの日常で、お口が果している役割とはなんでしょうか。
呼吸、会話、様々あると思いますが、一番に思いつくのは食事ではないでしょうか。
私たちの体に入るもののほとんどはお口から入ってきます、言わばお口は体の中、すべての臓器の入り口です。その入り口から入った食べ物は胃や腸で消化吸収されエネルギーへと変換されています。
この消化で一番重要なのが、臓器の入り口でもあるお口で噛むことです。噛む力が弱まると、消化だけでなく、体全体へ悪影響を及ぼします。

噛む力が弱まると・・・

 では噛む力(咬合力)が弱まるとどんな悪影響がでるのでしょうか。
食事の際、お口に入れた食べ物を消化しやすくするために、歯で噛むことで細かく潰し、唾液の分泌を促し唾液とまんべんなく混ぜあわせる事で消化を助けています。その噛む力が弱くなると、食べ物を潰すことが出来ず唾液の分泌も弱くなることで、飲み込むことも難しくなり、胃に入っても胃液で溶かすことができずに消化不良をおこします。
 お年を召してくると噛む力が弱まることで、飲み込んだ食べ物が食道を通らずに間違えて気管に入ってしまう誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)も引き起こしやすくなります。

咬合力の影響は食事だけではありません

 噛む力(咬合力)は食事以外にも生活の様々な場面で影響しています。
立ち上がる時、歩いている時、物を持ち上げる時など、噛むことで力を出しています。逆を言えば、噛む力(咬合力)が弱くなることで、これらの行動も弱くなってしまうのです。
 虫歯や歯周病で歯が無くなってしまい、ブリッジや入れ歯で治した方も多くいらっしゃるとおもいますが、咬合力は、ブリッジの場合、天然歯の約60%、部分入れ歯で約30%、総入れ歯では約10%前後まで落ちるとも言われています。
 たとえば無くなってしまった歯の部位をインプラントに代えて咬合力が上がったことで、食事も美味しく食べられ、立つ力や歩くスピードも上がったという症例もたくさんあります。
 皆さんも今一度、ご自身の噛む力を見直してみてはいかがでしょうか。
普段の生活で「こんな時にも噛みしめている」と改めて感じてみてください。