第68回 虫歯治療の型取りに使う「印象材」

 私たち歯科医師の行う治療で数の多い虫歯治療ですが、虫歯を削った後に詰めるインレーやクラウンといった詰め物を作る際に、一番大事なのは印象という「型取り」の作業です。
この印象が狂ってしまうと、出来上がる詰め物も狂ってしまうので、お口の中でうまく合わなかったり、せっかく治療した後がもう一度虫歯菌に侵されてしまう2次カリエスの原因になります。
 今回は当院で治療の際に行う「印象(型取り)」について解説します。

印象材の種類

 虫歯を削った後に、ピンク色や淡い緑色などのペースト状のものを使って型を取った経験があると思います。
それが型取りをする印象材と言われる材料です。保険で使われる印象材の材料は、ほとんどのものが海藻から採られるアルギン酸(アルジネート)という素材が使われています。
素材が海藻なので間違えて飲み込んでしまっても体には悪影響がない材料になります。
型取りの際には、粉末状のアルギン酸印象材を水と練ることでペースト状にして使いますが、水と混ぜていることで、少しでも水が蒸発してしまうと、採取した印象が変形してしまうデメリットがあります。
前項でもお話したように印象が変形してしまうと、出来上がる詰め物も変形した型を元に作られるので、当然お口の治療痕と合わずに隙間ができてしまったり、かみ合わせが合わないなどの不具合が出てしまいます。
その隙間から新しい虫歯菌が侵入して虫歯の再発(2次カリエス)の原因になってしまうこともあるのです。
 このような印象の変形を抑えた印象材が「シリコン印象材」です。
水を使わず固まるとゴム状になるので時間が経っても変形しづらい印象材で、アルギン酸より強固なので細部まで綺麗に印象を取ることができます。
 ですが保険治療で使われるアルギン酸印象材より高価なので、ほとんどの医院では自費治療の際のみで使われていることが多いです。

印象材へのこだわり

 虫歯治療の後、一番恐れていることは2次カリエスです。
せっかく健康な歯をなるべく抜かずに悪い部分だけ削って詰め物をしても、印象が原因で2次カリエスになって抜かなくてはいけなくなってしまう。
そんな状況にならないように、当院では保険治療の際でもシリコン印象材を使っています。
 2次カリエスを防ぐためには、正確な印象から作られる正確な詰め物で治療するのが一番と考えています。